20日のNHKスペシャルは、「ジャニー喜多川 〝アイドル帝国〟の実像」。一連の問題について、事務所やテレビ局の対応を中心に取材してきた記者の一人として見た。
米国時代を含むジャニー喜多川氏、藤島メリー泰子氏の来歴など取材は多岐にわたる。しかし、最大の衝撃は、書籍で性加害を告発しながら問題が大きな注目を浴びる前に亡くなった中谷良さん(アイドルグループ「ジャニーズ」の元メンバー)の姉・幸子さんに、SMILE―UP.(スマイルアップ、旧ジャニーズ事務所)の「補償本部本部長」が電話を通じて放った言葉の数々だ。
「誰が何を謝るんだというのが、ちょっと今分からなくて。本人たちが死んじゃっているんで」「本を書かれて痛めつけられたのは間違いないんで。会社としては、すごくつらい目にあったのは間違いないんで」。これらの発言は、NHKプラスの見逃し配信(27日午後9時59分まで)などで確認できる。
後に東山紀之社長が謝罪したというが、こうした発言は、旧ジャニーズ事務所=スマイル社がいまだに加害はジャニー氏だけの問題と認識しているのではないかと感じさせ、その「反省」を疑わせるものだった。
番組の批判的なまなざしは、長年ジャニーズを重用してきたNHK自身にも及んだ。ジャニーズ事務所顧問に転じた元NHK理事にも、アポなし取材をかけている。
組織ジャーナリズムの末端にいる身から想像するに、取材自体の困難さはもちろん、やっかいな身内の調整事も多かっただろう。ただ、制作陣に敬意を払いつつ、やはり気になることもある。
NHKは16日、補償に専念…